力強い反発を見ると、昨日まで慎重だった自分が、急に間違っていたように感じることがあります。
相場が上向き、強気の声が増えると、待つことが出遅れることのように思えてくる。私が日足チャートに説得されやすいと感じるのは、まさにこんな場面です。目立つ陽線に視線が集まり、その前の数か月の値動きは話題から消えてしまいます。
Stan Weinstein を読んでから、問いかけたいことが変わりました。相場のステージは、自分の売買の仕方を変えるほど改善したのか。
Weinstein は市場平均の分析で、ステージ3の天井形成が疑われる局面では「慎重に対応しなければならない」と述べています。出発点となるのは週足チャートと30週移動平均線。価格の形と、移動平均線の向きを一緒に読むことが大切です。
その手掛かりを SPY のチャートに載せて、ある反発局面を見てみます。後の結果を知っている安心感に頼らず、その時点で見えていた情報から考えてみましょう。
まず、時間軸に合った移動平均線を使う
週足では、直近30本の確定した週足終値を平均する、30週単純移動平均線(SMA)を使います。祝日で取引日が少ない週は、その週の最終取引日の終値を採用します。
日足の 150日SMA は、期間としてはおおむね同じ長さです。30週に、1週間あたり約5営業日を掛けたものです。ただし、こちらが平均するのは150個の日足終値。週足の線が平均するのは30個の週足終値です。祝日が入れば営業日数も変わります。併せて見る意味はありますが、同じ計算ではありません。
この事例でも違いが出ています。2025年2月28日の SPY の30週SMAは 583.57ドル、150日SMAは 580.20ドルでした。Weinstein のステージを考えるときは週足の線を使い、反発の細部を確かめるときは日足の線を見ます。
4つのステージを、チャートで確かめられる言葉にする
ステージの名前を覚えるだけでは、実際の相場には使いにくいものです。どの値動きを根拠にそう判断したのか、指で示せるようにしておきたいと思います。
| ステージ | SPY の週足で見ること | 相場を点検するときの意味 |
|---|---|---|
| 1 · 底固め | 下落後に価格が横ばいとなり、下向きだった30週SMAが次第に横ばいになる。 | 監視リストを準備する。1回の反発だけで、新たな上昇トレンドが始まったとは判断しない。 |
| 2 · 上昇期 | 価格がベースや持ち合いを上抜け、上向きの30週SMAの上を維持し、波動の高値と安値を切り上げる。 | 買いの候補を調べやすい相場環境。ただし、個別銘柄にはそれぞれエントリーとリスク管理の計画が必要。 |
| 3 · 天井形成のリスク | 上昇後に伸びが鈍り、値動きが荒くなり、30週SMAが上向きから横ばいになる。価格が線の上下を行き来することもある。 | 戻りの失敗や支持帯を詳しく見る。根拠が弱まるにつれて、保有リスクを見直す。 |
| 4 · 下落期 | 支持帯を割り、長期移動平均線の下で推移し、その線も下向きになる。 | 守りを重視して点検する。下降トレンド内の反発を本格回復と判断するには、さらに根拠が必要。 |
これは読書からまとめた実践上の見方で、自動分類のルールではありません。はっきり上向いている移動平均線の上での横ばいは、ステージ2の途中の持ち合いかもしれません。ステージ3になりそうな形が、再び上に抜けることもあります。休むたびに天井と決めつけてしまっては、Weinstein が伝えている大切な点を見落とします。
2月28日:反発は本物でも、相場の判断はまだつかない
SPY は 2025年2月19日に612.93ドルで引け、日中高値は 613.23ドルでした。2月27日には終値が 585.05ドルまで下落。翌日は 1.6%反発し、594.18ドルで引けました。
どちらのチャートも、タップまたはクリックで原寸表示できます。
まず上段を見ます。それまでの上昇は、紫色の上向きの30週SMAの上で進んでいます。右端に近づくと、高値圏の値動きが荒くなっています。注意したい変化ですが、移動平均線はまだ上向きです。2月21日の581.52ドルから、2月28日には583.57ドルへ上昇しています。SPY の終値594.18ドルも、その上にあります。
したがって、この時点ではステージ2後半で勢いが弱まり、ステージ3への移行リスクが出ていると読みます。天井形成が完了したと言い切るには、根拠が足りません。その判断を補強するはずの、移動平均線の横ばい化は、まだ見られないからです。
次に日足を見ます。青い150日SMAは580.20ドル。水平の破線は、以前から確認できた支持の目安として、1月13日の日中安値575.35ドルを示しています。2月28日の終値は両方を上回っていますが、2月高値にはまだかなり届いていません。
これで、次の点検で見ることが具体的になります。SPY は613.23ドルの高値を回復し、その先も上昇を続けられるか。長期移動平均線と1月の支持帯を守れるか。それとも戻りが失敗し、移動平均線が横ばいになっていくか。575.35ドルの線はチャート上の目安であり、支持が必ず機能するという約束でも、すべての銘柄に当てはめる損切り指示でもありません。
この読み方で私が気に入っているのは、結末を知っているふりをせずに警戒を続けられることです。1日の上昇が改善したのは、その日の結果です。3つの問いすべてに答えが出たわけではありません。
その後を見る:根拠が変わったのはいつか
3月7日、SPY の週足終値は 575.92ドルとなり、585.00ドルの30週SMAを下回りました。ただし、移動平均線はまだ上向きで、終値も1月の目安575.35ドルをわずかに上回っていました。記録すべき悪化ですが、移動平均線を割ったことだけで、判断のすべてが済むわけではありません。
3月14日には週足終値が 562.81ドルとなり、両方の目安を下回りました。30週SMAは、3月14日の585.28ドルから、3月21日の585.34ドルへ、ほとんど上がらなくなっています。そして 3月28日には 585.08ドルへ低下し、SPY は 555.66ドルで引けました。支持割れ、移動平均線の下にある価格、そして移動平均線の下向きへの転換。この組み合わせが、ステージ4と読む根拠になりました。
この移行では、完全に水平な線の周りで何か月もきれいにもみ合う期間はありませんでした。移動平均線が横ばいになるころには、価格はすでに下に崩れていたのです。実際のステージ移行は、教科書の模式図ほど整った形にはなりません。
SPY はその後、4月8日に496.48ドルで引け、4月30日には554.54ドルまで反発しました。それでも、150日SMAの580.46ドルと、最後に確定した週足である4月25日時点の30週SMA、580.88ドルを下回っていました。週足の移動平均線は下向きです。この過去の時点に立てば、私はまだステージ4の相場環境と読みます。
週足の図は、意図的に4月25日で止めています。4月28~30日は週が終わっていないため、日足の図だけに含めています。水曜日の終値を確定した週足終値として扱うと、計算が変わってしまいます。
結末を知ってから見ると、警戒すべき変化は簡単に見抜けたように感じます。学びたいのは根拠が変化した順序であり、2月28日にその後の下落を予測できたという話ではありません。
指数の点検を、毎週の習慣にする
私が Weinstein の本から学んだのは、相場の点検を、自分の行動につながるほど具体的にすることです。
- 確定した SPY の週足から始める。 終値、30週SMA、そして最近数週間の線の向きが上向き、横ばい、下向きのどれかを書き留めます。
- 価格の形に印を付ける。 直前の波動の高値、支持帯、戻りの失敗を確認します。移動平均線と併せて読みます。線をまたいだという事実だけでは、分からないことが多く残ります。
- ステージの見立てと、それを変える条件を書く。 「上向きの移動平均線の上だが、高値圏で伸び悩んでいる」という記録のほうが、曖昧なチャートを無理に天井と断定するより役立ちます。
- 見立てを保有リスクの判断につなげる。 環境が悪化したら、売買計画に沿って追加の確認を待つ、新規ポジションを小さくする、新規エントリーを休む、といった判断ができます。環境が改善すれば機会を調べる余地は広がりますが、どのブレイクアウトでも買ってよいわけではありません。
そのうえで個別銘柄を見ます。強い銘柄は、それまでの上昇を保てているか。有望に見えたブレイクアウトが、繰り返し失敗していないか。期待外れだった銘柄も含め、観察を日付付きで残しておきます。うまくいかなかった名前を黙って消し、勝ち組だけを残した監視リストは、気分のよい物語にはなっても、当時の選択肢を考える材料にはなりません。
SPY が示すのは S&P 500 の相場環境です。どれほど多くの銘柄が上昇に参加しているかを、それだけで測ることはできません。個別銘柄のセットアップに代わるものでも、あらゆる市場を同じように代表するものでもありません。Weinstein はほかの根拠も併せて見ています。この2本の移動平均線が、手法のすべてではありません。
市場全体への広がりを確かめるには、AlpharvestPro のマーケットコンパスも参考になります。市場の広がりを示すデータと SPY の週足ステージを併せて見て、指数だけでなく幅広い銘柄も強さを示しているかを確認します。表示されているデータの日付を確かめることも、いつもの点検に加えておきたいところです。
次の反発で問いかけたいのは、こういうことです。週足のトレンド、支持の形、そして追っている銘柄に、どんな改善があったのか。それは、自分のリスクの取り方を変えるに足るものか。
読書・チャート注記
Stan Weinstein, Secrets for Profiting in Bull and Bear Markets、第2章および第8章。特に4つのステージと、市場平均への適用を参照しています。引用の日本語は本記事による訳であり、刊行済み日本語版からの引用ではありません。SPY の事例とステージの解釈は本記事での応用であり、原著の事例やシグナルではありません。
SPY、価格は米ドル。週足の背景は2024年6月7日から、日足の詳細は2025年1月2日から。最初の図は2025年2月28日終値で区切っています。その後の日足は4月30日まで、確定した週足は4月25日までです。150日SMAは近い時間軸の日足上の目安であり、実際の30週SMAと同一ではありません。配当は含みません。過去の事例は結果を知ったうえで選んでいます。